経営資源集約化税制とは

経営資源集約化税制とは、M&Aにおいて買い手が中小企業である場合に、税制面での優遇が受けられる制度です。

  • ポストコロナ社会に向けて、経営資源の集約化等の支援制度
  • 取得価額の最大70%を損金に計上可能
  • 5年間の据置期間経過後、翌5年間で均等に益金算入
  • 最大10%の税額控除等の設備投資減税
  • 給与等支給増加額の最大25%を税額控除

制度背景

2021年8月より、中小企業の経営資源の集約化(M&A)に資する税制の施行が開始されました。 今後10年間で70歳を超える中小企業経営者は約245万人、うち約半数の127万人が後継者未定となることが予想されており、足元においても、年間5万3千件(2020年度)の休廃業・解散が起こっています。

中小企業経営者の年齢
倒産件数

この問題の解決策として国や地方自治体も支援体制を強化し、優遇税制や補助金等で推進しています。従来から実施されている、各県の支援センターにおける相談窓口・マッチング支援の他、M&A実施後のサポート体制が見直されました。コロナウイルス感染症を受け、業態転換の機運が高まり、中小企業のM&A件数はかなり増加しています。M&Aの売り手側は、「事業の承継」「従業員の雇用の維持」を目的とする割合が高く、また、特に若い経営者は、「業績不振の打開」「事業の成長・発展」を目的として M&Aを行う割合も高く、企業の成長戦略としてもM&Aが実施されています。M&Aの買い手側は、「売上・市場シェアの拡大」「事業エリアの拡大」といった付加価値向上 を目的とする割合が高く、「経営不振企業の救済」「後継者不在企業の救済」を目的とするM&Aも少なくありません。 M&Aは、設備投資や研究開発等と並び、中小企業の生産性向上の重要な手段の一つであり、M&Aを行った中小企業は、行っていない企業に比べ、5年間で約2.6倍生産性向上が実現しています。また、国際的に見ると日本の開業率は相当程度低水準であり、他者が保有している経営資源を引き継いで行う創業(「経営資源引継ぎ 型創業」)を促すことは、創業時におけるリスクやコストを抑える上で有用と考えられています。

労働生産性

M&Aによる規模拡大を通じた中小企業の生産性向上と、増加する廃業に伴う地域の経営資源の散逸・喪失の回避の双方を実現するために、経営資源集約化税制が創設されました。それと同時に、簿外債務や偶発債務の課題も顕在化してきていることから、会計・税務の専門家のサポートが求められています。

メリット

本来、株式の購入は一切損金にならないとされていますが、本税制の「準備金」として積み立てるなどの要件を満たした場合に購入価額(取得価格)の70%が損金として認められます。 M&A実施時には、多額の支出が伴いますが、利益が生じた期に実施することにより、トータルで手残り額を増加させることも可能です。 損金計上した後は、損金計上した1年目~5年目まで株式等を据え置きして、6~10年目の5年間で均等に益金計上していきます。 例えば、1年目に購入株式等の取得価格が10億円である場合は10億円×70%=7億円が損金となります。その後は、2~5年目まで据え置きして、6年目、7年目、8年目、9年目、10年目にそれぞれ7億円÷5=「1.4億円」を益金計上していくという流れになります。5年間の据え置き期間があるため、M&Aシナジー効果が発生するまでの間、税金を抑える効果があります。

税制改正

また、M&Aの効果を高める設備投資を行った場合、投資額の10%を税額控除 又は 全額即時償却し、取得時の損金とすることが出来ます。さらに、給与等支給総額を対前年比で2.5%以上引き上げた場合、給与等総額の増加額の25%を税額控除を受けることができ、M&Aで成長した利益を従業員に還元しやすくなります。

政府が期待する「経営資源集約化税制」の目的は、中小企業の生産性向上です。中小企業の経営資源を集約化させることで、将来起こりうるリスク(簿外債務等)に備え、より強固な組織構築が実現します。会社法改正で創設された株式交付制度(※)を併用することで、以下3点のメリットも享受できます。
※買収会社が自社の株式を買収対価としてM&Aを行う際、対象会社株主の株式譲渡益の課税を繰り延べる制度(株の売却時に課税が発生)

① 事業再編機会の拡大

手元資金や借入可能額を上回る大規模な事業再編が実現可能となります。また、株式市場で評価されている新興企業に効果的です。

② M&A以外の資金需要への対応

事業再編を行いつつ、資金を攻めの投資(設備投資・人材投資等)に活用可能となります。

③ 売手とのシナジー効果

対象会社株主が事業再編によるシナジーを享受できます。対象会社株主にも、企業価値向上へのインセンティブが生じ、売り手と買い手の協働による企業価値向上が期待されるようになります。

自社株式を活用したM&A

※令和2年11月11日中小企業庁 事務局説明資料より

これからの日本企業には、より一層経営資源の集約化が重要であるとして本税制に注目が集まっています。本サイトは最新の情報を掲載して参りますので、ご参照下さい。

手続きの流れ

手続きの流れ

※中小企業の経営資源集約化に資する税制リーフレットより

「経営資源集約化税制」
を受けるための要件

  1. 買い手が一定の中小企業者であること
  2. 主務大臣に経営力向上計画を提出し認定されること
  3. 一定のデューデリジェンスを行うこと
  4. 10億円以下の株式等の取得であること
  5. 準備金を積み立てること

会計処理の流れ

M&A実施時に、投資額の70%以下の金額を準備金として積立、同額を損金算入。

5年間の据置期間経過後、翌5年間で均等に取り崩し、益金算入。

設備取得時に、投資額の10%を税額控除、又は全額即時償却。

給与等支給総額を対前年比で2.5%以上引き上げた場合、給与等総額の増加額の25%を税額控除

申請の流れ

M&Aの相手方が決まったタイミング(基本合意後等)で、経営力向上計画を策定し、主務大臣の認定を受ける。

認定計画の内容に従って株式取得を実行した後、M&Aの報告を行い、確認書の交付を受ける。

税務申告において各種必要書類を添付し、準備金積立額について損金算入を行う。

POINT

弊社では、経営力向上計画策定サポート、DD、税務申告まで全て同一チームで対応するため、 書類の不備により優遇税制が適用できないというリスクを回避できます。 また、M&Aに併せて設備投資を行う場合の「設備投資減税」について、税理士又は公認会計士の事前確認が必要となるため、他のM&A仲介業者ではサポート不可能な部分まで対応することが可能です。